鈴廣×YS GEM
ジュニアアスリートの食育とサッカー環境
鈴廣かまぼこ11代目 鈴木智博さん
YS GEM FOOTBALL CLUB 今井浩一さん
~2022年8月19日 タウンニュース インタビューより~
――YS GEM鈴廣カップの開催おめでとうございます。2022年3月からはじまり、毎回20~24チームが参加されている大会ですね。お2人がタッグを組まれたきっかけは、どのようなことからでしょうか
今井:YS GEMホームグラウンドの湯本地域スポーツ施設が鈴廣かまぼこの里のすぐ近くで、練習に行く時にかまぼこを買っていました。すごく美味しくて!鈴廣といえば、全国的に有名な小田原を代表する老舗企業。サッカー日本代表の長友佑都選手とアスリートの食事をサポートする商品開発にも力を入れていることを知り、感銘を受けました。YS GEMの主催大会に参加してくださるチームの選手たちに小田原の鈴廣かまぼこを食べてもらいたいと考え、協賛をお願いしました。
鈴木:お話をいただいた時は即答でしたね。今井監督とは初対面、しかもオンラインでお話をさせていただいたのですが、すぐに意気投合して。私もサッカーが大好きで、サッカー少年でしたので、地元のチームとつながれてうれしいです。かまぼこといえば、「お正月に食卓に並ぶ縁起物」というイメージが強いかと思いますが、自然由来の良質なタンパク質が豊富ですので、ぜひ普段の食卓に取り入れてもらいたいのです。YS GEMのサッカー大会に参加した選手たち、保護者の方たちにぜひ、かまぼこの魅力を広めていけたらと思いました。
――今井監督は小学生を指導されて23年になりますが、ジュニアアスリートの体づくりと食育について、どのような考えを持っていますか
今井:運動強度が高いサッカーには、体づくりが大前提です。朝・昼・晩しっかり食べて、運動と栄養吸収のバランスをとることがケガ予防や体の成長につながります。しかし、食事をしっかりとれていない子どもたちが年々増えているように感じます。毎年、チームで夏合宿を行い、親元から離れて寝食を共にしてきましたが、そのなかで見受けられるのが、朝食を一切食べられない子どもたちです。当然ですが、体力は1日もちません。食べている子、食べていない子の差はひらきます。1年に一度のことですので、保護者の方にフィードバックをしても私では到底変えることができない。そこが悩みです。
鈴木:非常に興味深いですね。私の子どもは今、4歳、2歳、生後4カ月で、まだジュニアアスリートの年齢ではないのですが、作り手として「美味しく楽しんで食べる」ということも同時に提供しなくてはいけないと考えています。保護者は「食べなさい」、「食べないと上手くならないよ」、「あの選手は小さい頃からしっかり食べていたよ」とか言うしかないかもしれませんが、食事自体がつまらなくなってしまってはもともこもない。どうやったら「美味しくて楽しい」をキープしながら、3食しっかり食べられるかが課題です。当社ではこれまでにも工場見学やかまぼこ作り体験イベントなどに取り組んできましたが、魚のタンパク質を日常的に摂取することが子どもたちの体づくりに、そしてアスリートにとって良いという食育につなげていけたらと考えています。
――その思いが、長友選手との「魚肉たんぱく同盟」につながるのですね
鈴木:まさに、その通りです。当社では2000年頃から「タンパク質」をキーワードに商品開発やブランディングに取り組んできましたが、ようやくここ3年くらいで世間一般的にタンパク質の重要性が認知されてきました。2020年6月に長友選手と専属シェフの加藤超也さんにお会いする機会をいただき、その後、かまぼこをマルセイユに持っていっていただきました。ちょうど、試合後の疲労した状態で摂取するものについて悩まれていたそうで、UEFAチャンピオンズリーグ試合後の午後2時くらいに、「かまぼこだったらツルっと食べられるので、かまぼこ良いね!」と言ってくれて。長友選手のお子さん3人もかまぼこにハマってくれて、ご家族で気に入ってくださいました。長友選手も加藤シェフも「やるなら本気でやろう!」と、一緒に新商品やブランディングを考えてくださり、2020年12月末に「魚肉たんぱく同盟」を発表しました。
今井:UEFAチャンピオンズリーグの試合後に長友選手がかまぼこを食べていたとは!魚肉たんぱく同盟はそこから生まれたのですね。YS GEM鈴廣カップでも、おかげさまで試合の合間に選手たちがかまぼこを楽しそうにモリモリ食べています。その様子を見て、保護者の関心、特に母親の喜び方が今までにないほどです。私も最近、練習後の板かまぼこのまるかじりにハマっています。忙しい朝も、冷蔵庫から取り出すだけでしっかりタンパク質が摂れるので、ぜひご家庭の普段の食卓に取り入れていただきたいですね。
――長友選手の影響は、ジュニアアスリートの食育にとって大きいですね
今井:本当にそう思います。長友選手がかまぼこを食べているから、「なんだかオレ、スタミナついたかも」とか、子どもたちはシンプルに目的意識を持つことができますね。今まで選手たちに「食べなさい、食べなさい」でしたが、こうして楽しく取り入れていけたら。私も生後8カ月の子どもがいますが、保護者の立場からも美味しく、楽しんで食べられる環境づくり、食育が大切だと実感しました。
鈴木:小学生の頃、キャンプで必ずみんなで作っていたカレーも、今考えてみると食育だったのかなと思います。野菜とお肉がたくさん入っていて栄養バランスも良いですし、みんなでワイワイ作って食べる楽しみもある。
――楽しむことは、サッカーにも食事にも共通していますね。現在、サッカーでも食事においても情報や選択肢がたくさんあり、子どもたちを取り巻く環境は充実しているはずですがいかがでしょうか
今井:実は、サッカーの環境がこれだけ充実してきている反面、子どもたちが疲弊してきているという課題があります。チーム活動以外にもスクールに通い、週6、週7でサッカーをやっている子どもが増えていますが、それなのに食事がしっかりとれていない、友達同士で遊ぶ時間もない、幅広い学習をする時間もない。どうにかしてバランスがとれないかと考え、チームでもオフの日をつくっています。子どもたちのやる気は止めることはできませんが、サッカーはやるだけでは上手くならない。サッカー以外のことで、自分でやれることが多い子は、サッカーのコミュニケーション能力も高いです。全てつながっています。鈴廣さんの力を借りて、バランスの良い人間形成のための環境をつくっていきたいです。保護者の方のスイッチが入ると、子どもも変わってくるので。
鈴木:情報がたくさんありすぎて、保護者の皆さんも大変だと思います。お子さんのために、これが最先端だと良かれと思ってやり過ぎてしまうことは、実はとても危険だったりしますよね。当社も「かまぼこが硬くて子どもが噛み切れないから、やわらかくしてほしい」というご意見をいただき驚いたことがあります。今はサプリメントやドリンクなどで手軽に栄養が摂れる分、かまぼこが嚙み切れないというほど、咀嚼ができない子どもも実際に出てきてしまっています。自然由来の味わいを知り、自然のものを吸収できる体づくりをしていくことの重要性が増しています。
――その点において、YS GEM 鈴廣カップを通じた食育のきっかけは、保護者の方にとっても有意義なことではないでしょうか
鈴木:子どもたちが、自分のアイデアでかまぼこを使ったメニューを作るのも良いですね。YS GEM鈴廣カップで、優勝チームや優秀選手とか関係なく、「かまぼこシェフプレーヤー賞」とかはいかがですか。私は小学生の頃に優秀選手で表彰されることがあまりなかったので、このような刺客的な賞があったらモチベーション上がるなって思いました。
今井:面白いですね!ぜひチャレンジしましょう。選手の発想力も育まれますね。「小田原に試合に来たら、かまぼこ!」という、食育や産業への理解、学習、コミュニケーションの面においても広がりがつくれます。
鈴木:将来、YS GEM鈴廣カップを通じて小田原に縁がある長友選手のようなサッカー選手や、加藤シェフのようなプロフェッショナルが誕生してくれたらうれしいですね。
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