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日本非認知能力協会 会長 中山芳一氏 寄稿

スポーツと「非認知能力」
ーいま、子どもたちに本当に大切にしたい力とはー

1.「スパルタ」という言葉
みなさんは、「スパルタ」という言葉をご存じでしょうか。この言葉は、一昔前の日本のスポーツを思い浮かべるとき、よく使われてきた言葉の一つです。
ところが近年、日本のスポーツの現場では、こうしたスパルタ的な訓練や指導は次第に姿を消しつつあります。その代わりに、選手一人ひとりの主体性や、メンタルトレーニング、チームビルディングといった要素が重視されるようになってきました。その結果、日本のスポーツは多くの競技・種目で世界的にも活躍を見せています。
実は、この流れを支えている大切なキーワードの一つが、「非認知能力」だといわれています。

2.「非認知能力」とは何でしょう?
ここ最近、CMや雑誌、さまざまなメディアで「非認知能力」という言葉を目にする機会が増えてきました。それでは、この非認知能力とは、一体どのような力なのでしょうか。
まず、「認知能力」について説明します。認知能力とは、標準化されたテストなどによって、点数として評価・測定できる力のことです。一般的には、これまで学校などで主に測られてきた「学力」を指しています。
一方、「非認知能力」は、その名のとおり、標準化されたテストでは測りにくい力です。たとえば、忍耐力、向上心、協調性、やり抜く力、自分の感情を調整する力などがこれにあたります。少し昔ながらの言葉で言い換えるなら、非認知能力とは、「心の力」といえるでしょう。
AIが身近な存在となり、社会や世界の変化を日常的に感じるようになった現代では、「決まった正解を素早く出す力」だけでは対応できない場面が増えています。そして、これからの社会では、変化に対応する力や、新しい価値を生み出す力が、ますます求められるようになってきました。そのため、認知能力だけでなく、それを土台から支える非認知能力に注目が集まるようになったのです。
勉強においては学力、スポーツにおいては競技力といったように、私たちは「外側にあらわれる力」に目が向きがちです。しかし、そうした力を実際に支えているのは、内側で働いている非認知能力です。これまでの教育や指導の現場では、勉強では知識の詰め込み、スポーツではスパルタ的な指導が中心になることも少なくありませんでした。当時はそれが最善と考えられていた背景もありますが、力が身につくまでの「プロセス」が十分に言語化されていなかった場面も多くありました。
その象徴ともいえるのが、「気合いを入れろ」「根性を出せ」といった言葉ではないでしょうか。これらの言葉は、何をどうすればよいのかが子どもに伝わりにくいものでした。今、私たちは、こうしたあいまいな言葉に頼る指導から、少しずつ抜け出そうとしています。その手がかりの一つとなっているのが、「非認知能力」という考え方です。

3.スポーツは、非認知能力を育てる特別な場
「SPORTS」という言葉は、もともと日常から離れて心身を解放する活動を意味していました。本来スポーツは、無理やりやらされるものでも、勝つことだけを目的とするものでもありません。自分の心と体を解放し、やりたいことに挑戦し、楽しみながら高みを目指すことができる「非日常」の場です。
非認知能力は、本人の意識次第で日常生活の中でも育てることができますが、非日常のスポーツには、日常以上に非認知能力を刺激する要素が多く含まれています。
たとえば、
・意欲的に前に進もうとすること(Step forward)
・仲間と協力し、チームワークを発揮すること(Teamwork)
・途中で投げ出さず、最後までやり抜くこと(Action)
・失敗や困難に直面しても、気持ちを切り替えること(Resilience)
こうした経験は、スポーツに取り組む中で自然と求められます。これらのプロセスをはっきりと言葉にし、意識することで、非認知能力を内側で発揮しながら、競技力といった外側にあらわれる力を伸ばしていくことができるでしょう。

4.スポーツを超えて、生きる力へ
スポーツを通して育まれた非認知能力は、決してその競技の場面だけにとどまりません。学校生活や人間関係、将来の仕事や人生のさまざまな場面でも、大きな支えとなります。目の前の結果だけでなく、その過程でどのような力が育っているのか。子どもたちの内側で育まれている力に目を向けることが、これからの教育や子育てにとって、ますます大切になっていくのではないでしょうか。
スポーツの中で積み重ねられる一つひとつの経験が、子どもたちの「生きる力」を静かに、しかし確実に育てています。私たち大人がその価値に気づき、言葉にし、支えていくことが、子どもたちの未来をより豊かなものにしていくはずです。

中山 芳一氏
 日本非認知能力協会 会長
 ALL HEROs合同会社 代表
 IPU環太平洋大学 特命教授
 元・岡山大学教育推進機構 准教授

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